『白蓮のごとく』(山上弘道著) |
【まえがき】 法華経は現実肯定のお経といわれる。それは本文にて再三述べるように、諸法実相、すなわち現実世界・森羅万法のあるべき姿を基調として、成仏論や平等観が展開されているからであろう。また法華経は実際に説かれた釈尊在世よりも、滅後、中でも末法濁悪の世に生きる者のために説かれている。そういう意味では、文字どおり末法のまっただ中、混迷の社会を生きるわれわれのために贈られたメッセージなのである。 では、法華経はわれわれにどのようなメッセージを贈られているのだろうか。それを知るためには、まず法華経が何を目的として説法されたかという、根本命題を知らなければならない。それは一言でいえば「下機を救う」ため、具体的にいえば在世でもっとも救いがたいといわれた二乗を救うためであり、さらにはもっと度しがたい滅後末法の荒凡夫を救うためである。 釈尊はそうした命題を掲げ、第一章『序品』から第二十八章『普賢菩薩勧発品』まで、実に用意周到にそして懇切丁寧に順を追ってその目的を遂行されている。つまり法華経はきちんとした筋道が立てられた一つの物語なのであって、その全体像を知るためには、やはり一から順を追って拝していく必要があるのである。たとえば法華経には多くのたとえ話が述べられているが、それらを個々に見ていっては、なかなかその本当に意味するところはつかみにくい。法華経という物語の流れの中で、その時その時に釈尊が必要と思われて語られているのであって、その釈尊の心模様や、対告者(語る相手)の息づかいを感ずることによって、はじめて生き生きと光彩を放つのである。 本書はそうした観点から、まずその命題について考え、そして法華経の流れを重視し、その流れの中で各章がどのような役割を持っているのかという点に注意を払い、解説を試みた。できるだけわかりやすくすることに努めたつもりであるが、最低限の仏教用語、さらに法華経ならではの用語等についてはあえてそれを用い、その時に応じて解説した。第一部はそういう意味では多少骨が折れるかもしれないが、この際勉強のつもりで読み進めてもらえればありがたいと思う。 法華経の精神を知れば知るほど、混迷の時代を生きるわれわれに大いなる指針となるばかりか、勇気と希望を与えてくれていることを痛感する。さすが末法の衆生を救うために説かれたお経である。混迷する現代社会を蘇らせるためには、小手先の小細工ではなく、大いなる発想の転換と、抜本的な改革がぜひとも必要であろう。法華経は必ずその指針となると確信する。また、日常の生活においても、閉塞した現状を打開するカギを示してくれるはずである。本書が、いろいろな課題を背負いながらも、未来に希望を懐いて懸命に生きる方々の、一助となることを切に願う。 |
【目次】 まえがき 第一部 法華経とは 一、法華経のテーマ 16 二乗作仏 久遠実成(滅後の弘教) 【法華経の構成図】 20 二、法華経の構成と内容概観 22 迹門と本門 二処三会 二乗作仏の流れ(三周説法) 滅後弘教の流れ 第二部 二乗作仏―平等思想 第一、法華経の幕開け 30 法華経の幕開け──第一章『序品』から第二章『方便品』へ 30 二乗はなぜ諸大乗経で嫌われたのか 二乗を成仏させなければ──釈尊一代説法の総仕上げ 第二、二乗を救う──二乗作仏 37 一、上根の二乗へ──舎利弗よ、かく信ぜよ(法説周) 舎利弗への説法──第二章『方便品』 37 〈未熟なることを知れ〉 〈諸法実相を基調とする〉 〈二乗の疑問〉 〈大信力を起こせ〉 〈仏が世に出現する目的〉 〈二乗も三乗もない──開三顕一〉 〈以上のポイント〉 舎利弗の領解と授記──第三章『譬喩品』の前半 50 二、中根の二乗(四大声聞)へ──それではたとえを示そう(譬説周) 55 三車火宅の譬──第三章『譬喩品』の後半 55 〈三車火宅の譬〉 〈この世の衆生は我が子なり〉 〈信をもって入る〉 四大声聞の領解──第四章『信解品』 61 〈長者窮子の譬〉 〈愚直の大切さ〉 仏の確認(述成)──第五章『薬草喩品』 67 〈三草二木の譬〉 〈不改本位の成道〉 〈『五体不満足』〉 〈個性が大切にされない〉 四大声聞への授記──第六章『授記品』 82 三、下根の二乗へ──それでも理解できないならば(因縁周) 84 三千塵点劫の昔の因縁譚──第七章『化城喩品』 84 〈くり返しの妙〉 〈三千塵点劫〉 〈大通智勝仏と十六王子〉 〈釈尊と二乗たちの因縁譚〉 〈宝処は近きにあり──化城の譬〉 下根の二乗への授記──第八章『五百弟子受記品』第九章『授学無学人記品』90 〈富楼那は何も語らない〉 〈衣裏繋珠の譬〉 〈学の足りた人も足りない人も〉 四、二乗作仏の総括 96 第三部 滅後の弘教 第一、滅後を本とす 100 第二、迹門の流通分 102 一、滅後法華経流通の総論──第十章『法師品』 102 二乗から菩薩へ 『法師品』の構成 法華経受持・弘通の功徳 法華経は最為第一 塔を建てよ 滅後弘教の方軌 二、宝塔の涌現──第十一章『見宝塔品』 110 証前──多宝如来の証明 〈多宝の証明〉 〈三変土田〉 〈二仏並座〉 起後──私の滅後法華経を弘通する者はいないか(三箇の勅宣) 三、二箇の諫暁──第十二章『提婆達多品』 119 提婆達多の悪人成仏 竜女の女人成仏 四、迹門の菩薩たちの誓願 129 深行の菩薩の誓願──第十三章『勧持品』 129 浅行の菩薩の弘教の方軌──第十四章『安楽行品』 133 〈四安楽行〉 〈髻中明珠の譬〉 第三、末代悪世の弘教を託す──本門の目指すもの 138 一、滅後の弘教委託への道程概観──本門前八品の構成 138 二、地涌の菩薩の登場──第十五章『従地涌出品』 140 止みね善男子 地涌の菩薩の登場 弥勒菩薩の疑問 さらなる疑問 三、久遠実成と我本行菩薩道──第十六章『如来寿量品』 147 五百塵点劫 久遠実成(開近顕遠) 我本行菩薩道 良医の譬──悲しみが心を開く 157 〈仏涅槃の意味〉 〈良医の譬〉 〈悲しみが心を開く〉 〈遣使還告〉 自我偈──仏の誓言 四、『寿量品』聴聞の功徳──第十七章『分別功徳品』の前半 166 授記──仏の長寿を聴くすべての者へ 弥勒菩薩の領解 五、本門流通分の構成 169 六、滅後流通の功徳 171 現在の四信と滅後の五品──十七章『分別功徳品』の後半 171 初随喜五十展転の功徳──第十八章『随喜功徳品』 179 凡夫のままの六根清浄──第十九章『法師功徳品』 182 滅後弘教の亀鏡──第二十章『常不軽菩薩品』 188 〈末法に法華経を行ずる者の軌範〉 〈不軽菩薩の話〉 〈但行礼拝の意味〉 〈不軽菩薩を紹継す──真の折伏行〉 〈雨ニモ負ケズ──デクノボー精神〉 〈信頼の世界目指し〉 七、滅後を託す──付属の時 201 本化地涌の菩薩への付属──第二十一章『如来神力品』 202 〈十の不思議な力〉 〈悪世末法の衆生をたのむ──結要付属〉 その他の者への総付属──第二十二章『嘱累品』 207 第四、滅後弘教者への応援歌 211 一、火にも焼けず水にも漂わず──第二十三章『薬王菩薩本事品』 212 二、妙音菩薩の誓い──第二十四章『妙音菩薩品』 215 三、その名を呼べば──第二十五章『観世音菩薩普門品』 218 四、陀羅尼呪を唱えよ──第二十六章『陀羅尼品』 222 五、善知識が大切だ──第二十七章『妙荘厳王本事品』 223 六、六牙の白象に乗って──第二十八章『普賢菩薩勧発品』 227 第五、結経『仏説観普賢菩薩行法経』について 230 一、不断煩悩・不離五欲 二、法華経は諸仏の宝蔵 三、業障海は妄想より生ず あとがき 237 |
平成16年4月28日発行 ISBN4-901545-03-5 C1015 四六判 240頁 価格:¥2,300(税込) 10冊以上は送料無料で発送します。 |
一般書店では発売しておりませんので、継命新聞社事務部にお問合わせ下さい。
ファックス・葉書等でお申し込みいただけます。
消費税込み、送料別です。
(株)継命新聞社 事務部
〒221-0057 神奈川県横浜市神奈川区青木町1-10 アーバンビラ五番館207号
TEL (045)444-2124
FAX (045)453-0898